東京は桜新町のビルの間にひっそりと、それでもって独特のオーラを放って存在するインドカレーショップ”砂の岬”。
カレーはもちろん店作りからメニュー表にいたるまでほとんどが手作りという空間で提供されるカレーは絶品。
こういう書き方をするとどんな店構えだと想像したくなるでしょうが、この店構えはもしかしたら通り過ぎてしまうんでないかと思うくらい周りにとけ込んでいるんだけど、ここのカレーを一度口にした人ならその店が醸し出すの独特の美意識を隅から隅へとチェックしたくなってくるはず。
自分はとにかく食べることが大好き。
音楽の次に好きだと思う。
でも決して食通というほどではない。ただ好きなだけ。
食べることは一生にそう多くはできない。
だから1食1食を気合い入れたいものです。
それは外食だけではなく、作るときも。
さてこの砂の岬ですが、本当に不器用な店(笑)。そして本当はあまり紹介したくない店。
これ以上混んでも困るから。
砂の岬はとにかくよく休む。開いてるのは木曜から日曜。
そして年に数回スパイスの買い付けと名を打ってインドに行っている。
それを考えたら年に半分近くは店を閉めていることになるんじゃないかな?
オープン当初はオーナー夫妻のカリボンとユキちゃん二人で切り盛りしてたから大変そうだったな。
(今でこそ従業員が2人増えたけど、それでもカレー作りはカリボン、接客はユキちゃんというのは変わらない)
何故何度も不器用だと言ってるかと言えば、彼らが最近出版した『不器用なカレー食堂』にちなんでいる、訳ではない。
(少しだけかけてます)
この不器用というワード、どうしてもネガティブワードにとらえられがちですよね。
しかしこの不器用という言葉をマイペースという言葉に変換してみてください。
そうするとイメージが変わってきますよね?
彼らは何故店を休むのか?それは続けるため。(詳しくは『不器用なカレー食堂』を読んでください)
基本的には個人的に飲食店は一人でキッチンをやっている店が好き。
ラーメン屋だってそう。
それは味のブレが最小限に抑えられるから。
人には色んな考え方があって、ビジネスの為にはレシピを作り、そのレシピに従って従業員が作るというのが基本。
確かにこれも悪いとは言ってないですよ。
いつでもそれが食べれるのであれば。
しかしこれはあくまでも個人的な感想ですが、そこには「平均」というものしか存在しない場合が多い。
チェーン店はチェーン展開することによって、より多くの人たちにその味を知ってもらうことができる。
そしてオーナーは多くのお金を得ることができる。
これが利点といえばそうかもしれない。
自分でもチェーン店はそれはそれで悪くないと思いますよ。平均を食べに行くのです。
それとは対照的なオーナーシェフの店。
テレビや雑誌メディアに出まくり、実際はあまり調理をしてないオーナーシェフも沢山いますので、一概に良いとは言えませんが、砂の岬のスタイルのオーナーシェフの店や、大好きな六本木「ションズイ」のようにシェフが一人しかいない店。
こんな理想な店は素晴らしい場合が多いです。
(あと自分の考えとしてはシェフがタバコを吸わないというのも基準になります)
それはそうですよね、隅から隅まで目が行き届いているし、全ての責任を負って調理しますから。
その日の気温や湿度、天候なんかで調理は微妙に変わってきます。
レシピでは対応できない、まさにレシピの行間を読まないといけない作業。
まあこのスタイルにも欠点があります。
店を休めない、シェフの体調にも左右される、とにかく続けることが大変なんですよね。
だから砂の岬は店を休むんですね。
その休むことで営業中は最高の食を提供できるのです。
「まあまあ」や「そこそこ」ではなく究極に心に響くまさに芸術をです!
何度も言いますが、このスタイル以外はクズだという訳ではないです。
皆目指すものが違いますから。
飲食店でも居心地や安定、お金、名誉、多くの人への提供、コストパフォーマンス、入り口等など全て生活の一部と考えたら納得がいく話です。
それぞれその日の気分や懐具合などで決めたらいいでしょう。
それはあなたが何を求めているかということです。
おなかを満たすためなのか、友達と語らうためか、食の感動を求めるためか、それぞれの用途で選べば良いと思います。
それぞれのプロの店を選べばいいんです。
音楽を楽しむ場所も同じようなこと。
音楽に感動を求めに行くのか、友達とワイワイしにいくのか、異性を求めて行くのか、酒に飲まれに行くのか、居心地の良さを求めに行くのか、、、
ただ気をつけなければいけないのは、最近は音を一番の売りにしているはずのクラブやDJバーなどが、実は経営のことで頭が一杯で一番大切にしなければいけない音・音楽を粗末に扱っていること。
とにかくデカい音がなっていればいいとか、人が入ればいいとか人気あるDJを入れればいいとかそんなことばかり考えている人たちが多い気がします。
昔に比べたら骨があるやつが少なくなってきましたね。
もうクラブバブルはとっくに過ぎ去ったというのに、あのときの夢にまだ浸っている人たちのなんと多いこと!
そんなやつらが砂の岬のカレーを食べたら一体どういう感想を抱くんだろう?
ちょっと脱線しましたが、砂の岬のもう一つの売りが接客。
皆に分け隔てもなく笑顔を振りまくユキちゃんの接客をどこぞのクラブ受付に学んで欲しいです。
メインであるカレーに感動して、おまけに店を後にするその瞬間まで付かず離れずのスマートで笑顔な接客に感動して帰宅する。また行きたくなるにも理由があります。
さてさて何を言いたいのかと砂の岬には自分と同じ職人根性があるなと。だから共感できるのかな。
職人と言えばただ何も言わず黙々と仕事して、時には弟子を叱りつけ、、、なんて昔のイメージありますが、個人的に思うのはその仕事に真面目に一生懸命まっすぐに取り組んでいる、多少不器用と思われがちの人のことではないでしょうか。
そんな砂の岬の二人が書いた『不器用なカレー食堂』(晶文社)、絶賛発売中です!
また一度は砂の岬のカレーと接客と手作りの店内を体感してみてください!