土曜日、B4Eもついに10歳になります。

10年一昔とい言いますが、確かに10年前何してたか?という問いに正確に答えることは難しいですよね。
10年くらい前ならぼんやりと浮かぶのですが、、、記憶力の低下は年々実感しています。

覚えている範囲で書かせてもらいます。

Calmとしての活動が10年を迎えようとしていた2006年、その前までは500人〜1000人規模のパーティーを主宰していました。
レーベルのアーティストのショーケースだったり、多くのゲストを迎えながらのパーティー。
その中で自分のDJとしてのスキルを磨いていたのですが、Loftやプレシャスホールなどに接する機会が増え、自分のやっていることは自分にとって本当に大切なことなんだろうかという疑問が浮かんでいました。
確かに音楽に対する恩返し、そして広めるという活動としてはより多くの人に発信する機会を持つことは大切です。
しかしそれに対する精神的な代償は非常に大きな物へと膨らんでいきました。
ピュアに音楽に接することも難しくなり、それが製作の方にも影響が出るのではないかという不安もありました。

常に音楽へは正直にいたいと思っています。
そりゃ生きていく手段として音楽を選んだ身としては、お金のことも考えなければいけません。
だだしお金とピュアな気持ちが逆転することは自分にとって当時も今も許しがたい行為です。
あちらの世界に足を踏み入れ、そのときのお金に踊らされ、そして今は苦悩の時代を迎えている人を沢山見てきました。

勿論どちらが正解とは言えません。
多くのファンに囲まれ、多くのセールスを記録し、音楽以外のことでも注目され、裕福な生活をする。
それも一つの生き方だと思います。
ある意味そういった大衆音楽の極みだけが好きな人が、ストレスなく行なうことに関しては喜ばしいことであると思います。
自分もそれを全て否定するわけではなく、その一部分は認めますし、そういった音楽の中にも素晴らしいものが存在することも確かです。
音楽への誠実さとビジネスが逆転しなければ全くもって問題ありません。
それは常に挑戦しているところです。

しかし10年前の未熟な自分の精神では、到底太刀打ち出来ないような問題でした。
どうやれば人が集まるか、採算が取れるか、、、などそういった事柄ばかりを優先して考えはじめていました。
そのときの自分の心の葛藤。
自分が信じる音楽に嘘をつきはじめていました。

そんな当時の未熟な自分にできる決断。
原点に立ち戻ること。
全てを捨てて、手の届く範囲で出来ることを。
大きなことは他の人に任せ、それに共感して参加すれば良いのだと。
自分自身の心のオアシスは自分で作らなければいけない。

そういった経緯からBound for Everywhereは下北沢Wedgeで2006年6月に産声をあげました。
何故下北?
それは当時のWedgeにはUREIもあればDope Realも設置されていました。
更に下北沢というある意味クラブ業界のマイノリティーな土地での挑戦に心惹かれたからです。

あれから青山Loop、渋谷Plugなどを転々として、現在は青山Zeroで開催され、10歳を迎えたわけです。

多少のプレイスタイルや選曲、機材面など時代とともにに変化をしていて、いまだ発展途上ではありますが、現在もパーティーを始めた頃、はたまた音楽を始めた頃と同じ精神で続けることができているのは確かです。
山あり谷ありの人生ですが、一つの芯は通しているつもりです。

Bound for Everywhereというタイトル。
覚えにくい、言葉に出して言いにくいタイトルですが、自分の音楽哲学と一つの線で繋がっています。
幼少の頃から沢山のスタイルの音楽を聴いてきています。
こちらもいまだ旅の途中ではあります。
ジャンルではなく、自分の琴線にひっかかる素晴らしい音楽。
家で聴く音楽も、製作やDJに関してもそう。
何か漠然とはしていますが、ジャンルで音楽を聴いたり発信したりすることはありません。

Calmという音楽を聴いて、先入観を持ってパーティーやDJに接した人は少し違和感を感じるときがあるのかもしれません。
『〜はかけないんですか?』『意外に上げるんですね』とか言われることもあります。
勿論パーティーの趣旨によってラウンジだったり、無機的だったりすることはありますが、基本ダンスなパーティーでは、皆が心地良く踊れるように心がけています。
そしてLoftから学んでいる「パーティーとは何か?」については常に考えるようにしています。
Calmの楽曲やアルバムの中でも印象的なタイプの楽曲はもちろん大好きです。
それと同じように激ダンスな曲や無機的なテクノな楽曲も大好きだし、激しい曲も大好きです。

もしCalm的な曲しか聴いてなくて、それに影響されて曲作りをしたりDJをしたりしか出来ないとするとします。
それは何とも寂しいことだし、何とも創造力に乏しいのではないだろうか!
元々あるアイディアの派生しかできないような貧しい創造力、制作力、発信力しかないようであれば、一生を音楽に費やすことなどできないのではないでしょうか。

だからBound for Everywhereには変な先入観を捨てて望んで欲しいと常々思っています。
変な感じかもしれないけど、Calmの楽曲を聴かずにパーティーに来た人達の方がはまりやすい傾向があります。

Bound for Everywhere。
新幹線などに乗っていると耳にするBound for~という言葉。
〜行き。
Bound for Everywhere=何処へでも行ける。
そんな自分の音楽哲学に基づいたタイトルなんです。
パーティーのタイトルはシンプルにかっこいいというのが鉄則かもしれません。
でもこういったパーティーがあってもいいんじゃないでしょうか。

Bound for Everywhere、通称B4Eでは色んなタイプの音楽がプレイされます。
離陸から着陸まで、その時間帯やクラウドによって様々な質感とテンポが時間を支配していきます。
1曲1曲に心を込めて針を落としていきます。
その1曲1曲が静かでまだ寒いくらいのダンスフロアを少しずつ暖め、最後は安心して家に帰れるように少しずつクールダウンしていきます。
音は決して音圧に頼ることなく、しかし家では体感できないギリギリの音量、そしてレコードを中心としてアナログ機材を駆使した、耳を通り過ぎ心の奥底に届くようなサウンドシステム。
自分の現時点でのパーティー哲学はそこにあります。


そんな哲学の下プレイされる1曲1曲が一晩を構成し、その一晩一晩がこれまでの10年を築きあげています。


10年に一度しかないこの大切な瞬間を皆さんと共有できるのであれば、それ以上に幸せなことはないと思っています。
1曲1曲に感謝を込めて針を落としていきます!

B4Eを支えてくれている仲間と共に、皆さんの参加をお待ちしています!


Calm


2016.7.30 (sat)
Bound for Everywhere@Aoyama Zero
Open/Start 23:00
Music Navigated by Calm Open to Last
Deco By Family Deco
Fee : Donation

calm